テーマ:二酸化炭素(CO2)を利用した食品加工技術の開発
CO2を水に溶解すると酸性化、酸素除去、陽イオンの沈殿等を同時に生じる(右図)。これらを食品加工に適用した場合、微生物の増殖抑制、殺菌や酵素失活の容易化、多糖類の抽出、食品の酸化防止等、食品の品質安定や加工に多くの利点を生じると期待される。一方で、CO2を穏和な加熱等で除去すればこれらの効果を容易に消去できる。したがって、CO2の溶解・除去は、食品加工の間のみ、残留物なく、CO2分子のまま上記の複数の利点を同時に利用可能な食品加工法になり得る。
研究の具体例
① 減塩魚醤の作製:
魚醤とは、魚を食塩存在下で発酵させて作製する液体調味料である。塩味と魚の風味・濃厚なうま味を有する一方で、20-25%にも及ぶ塩濃度の高さや独特のにおいが課題となっている。
加圧CO2処理によって原料の魚種に依存せず、高品質(高有利アミノ酸量、淡色化、出汁様の風味やにおい、うま味コクの向上)な減塩魚醤(10%)を作製できた。
将来は、現状廃棄されている未利用魚を有効活用して減塩魚醤の作製を目指す。
② 柑橘搾汁残渣の活用:
ペクチンとは、植物中に広く存在する多糖類であり、食品の増粘剤やゲル化剤として多用される。従来のペクチン抽出方法では発癌性物質の生成やペクチンの構造変化が懸念される。そこで、加圧CO2処理下での加熱により柑橘類の搾汁残渣からペクチンを抽出し、その特性をした結果、従来よりも、エステル化度、分子サイズが大きいことが明らかとなった。
一方、ペクチン抽出後にさらに生じる残渣にはセルロース等が残存する。そこで、ペクチン抽出後の残渣をナノファイバー化処理することで活用する方法を検討している。
③ 肉エキスの調製:
肉エキスとは、少量の添加で食品の風味を向上できる食品添加物で、肉のうま味や風味が凝縮されている。従来の酵素分解法ではpHの調製が必要であり、塩酸分解法では発がん性物質が生じることが懸念される。加圧CO2処理により製造した肉エキスでは、淡色化やうま味コクの向上が認められた。また、油滴が微細化され、より優れた風味を持つと推測された。加圧CO2を用いた製造プロセスのランニングコストは、従来法よりも低いと見込まれた。将来は、安全性に配慮し優れた風味を持つエキスの作製法の確立を目指す。